===== RMG流エッジトレーダー活用法 =====

「鞘取りなんて難しくない」
誰でもできる、レイダーズ流「テクニカル鞘取り」入門

≪第1回≫

 これまでリスクマネジメントを中心に、数回のシリーズで連載を続けてきたが、今回から趣向を変えて、より実戦的な内容を、やさしくわかりやすく紹介していくことにする。過去において、トレンドフォロースタイルの売買手法については数多く紹介してきたが、今回はフューチャーズ誌への特別寄稿として、本邦初公開の「レイダーズ流鞘取り理論」を紹介しよう。

<エッジトレーダーについ>
 このシリーズでは、分析ツールとして「エッジトレーダー(鞘取り版)」を用いているが、このソフトウェアは、私自身が設計開発したものである。これまでに存在していた市販のソフトウェアでは、自分の売買戦略を実行に移すのはどうしても力不足で、思うように相場分析ができなかった。そこで仕方なく「だったら自分の理論にあったツールを、自分で開発してやれ」と思い、自分なりの理想的な相場分析ツールを開発することにしたのである。
 このような訳だから、このソフトウェアの最大の特徴は、レイダーズ流の分析手法がそっくり再現されるという点と、日々分析とテストを繰り返す真剣なトレーダーをサポートするための簡便な操作性だろう。一般的な分析指標はもちろん大半をカバーしているが、私にとってそれらはあまり価値を持たない。私が使うのは、自分で開発したオリジナル指標が中心になる。だからある意味で、このソフトウェアの価値は、レイダーズ流分析理論の価値だということになるだろう。それが本当に価値があるかどうかは、こうした実戦的な分析法の紹介を通じて、 ユーザーに判断して頂ければ良いと思っている。
現在このソフトウェアは月額利用料制で市販もしているので、興味を持たれた方は、最後の案内から試用版が入手可能である。使用版は全ての機能が1ヶ月間無料で利用できるようになっているので、まずは試してみて頂きたい(ただしHPからのダウンロードのみ無料。CDロムによる入手は実費として1050円必要)。

 さて、それでは本題に入ろう。

<鞘取りとは>
 「鞘取り」は古くから存在する売買戦略であるが、その収益特性が通常取引のリスクよりも低めであるという認識から、最近はブームの様相を呈している。マーケットニュートラルという手法を取る、本来の意味のヘッジファンドも、言うならばこの鞘取りを活用して、低めのリスクで、高めのリターンを追及しようとしたものである。
 しかし実際問題として、鞘取りのリスクが低いというのは、間違った認識だと私は思う。通常の売買だろうが鞘取りだろうが、基本的なリスクマネジメント理論を確立していないなら、結果は同じことである。それよりも鞘取りが売買戦略として価値があるのは、通常の売買とは異なる収益特性を得られるということだろう。

 鞘取りを紹介している本は過去に何冊も出ているので、何も今更私が詳しく書くことはないかもしれない。しかし残念ながら、これまでの鞘取り理論は、経験則に基づく感覚的なものが中心で、一般投資家がそれを読んでも、なかなかすぐに売買手法をマスターするというわけにはいかないものが多かったように思う。ある意味「修行」を必要とされるのである。しかしこれは私自身の経験からも、そうなってしまうのは仕方のないことなのかもしれないと思っている。

 鞘取りというとき、先物の世界では、大きくわけて3種類の鞘取りが存在する。ひとつめは先物独自のものとして「同銘柄異限月間鞘取り」がある。例えば、灯油の3月限を売り、同時に同じ灯油の5月限を買うというように、同一銘柄における異なる限月の売りと買いの組み合わせである。2つめは一般にストラドルと呼ばれる「異銘柄間鞘取り」である。これは灯油とガソリン、金と白金、大豆とコーンのように、異なる銘柄でありながら似通った値動きをする銘柄の間で、鞘取りを行うものである。3つ目はアービトラージと呼ばれる「同銘柄異市場間鞘取り」である。これは東京ガソリンと中部ガソリン、東京粗糖と大阪粗糖のように、同じ銘柄でありながら、上場されている市場が異なる商品の間で鞘取りを行うものである。しかし厳密なことを言うと、市場が異なると受け渡し条件が異なる場合が多く、鞘の変動を見る限りアービトラージとストラドルの区別は曖昧である。
 このように考えると、大雑把には限月間の鞘取りと、異銘柄間の鞘取りの2つに分類しても良いのではないだろうか。そして実際の売買では、この2つが結構複雑に組合されていく。例えば、@東京ガソリンの「3月買い+5月売り」、A中部ガソリンの「3月買い+5月売り」、というアイデアに加え、B「東京5月売り+中部5月買い」というアイデアが成立している場合、実際にはC「中部3月買い+東京5月売り」がベストということになる。
 このような売買の仕方が実際のトレーダーが行う鞘取りであり、私もトレーダー時代にはこれを行ってきた。私がトレードを行っていたときには、東京、大阪、名古屋の国内3市場の大豆に加え、シカゴ大豆と為替相場の間で鞘取りを行っていた。しかもそれぞれの市場の限月間の鞘取りも同時に行うのだから、大変な数の鞘の組み合わせを瞬時に判断して、最適な仕掛けを見出すという、それはもう極めて職人的な売買を行っていた。戦争のような毎日だったが、今から考えればよくできたものだと自分でも感心するくらいである。

<レイダーズ流鞘取り>
 しかし一般投資家の方々に、このような複雑な鞘取りを、しかも感覚的に説明しても、その売買戦略を習得するのは至難の技ではないだろうか。そこで今回は、これまで難解であった鞘取りの世界に、私が得意とするテクニカル分析を持ち込むことで、できる限り感覚的な分析手法を排除し、誰にでも理解できるレイダーズ流「テクニカル鞘取り」を紹介してみようと思う。
 当然ながら、実際のトレーダーが行う鞘取りに比べ、相当シンプルなものになるし、売買の期間や頻度も少なくなるが、一般投資家にとってはこちらの方がわかりやすいはずである。

 今回紹介するのは、イメージ的に捉えやすい、異銘柄間の鞘取りの例である。鞘の変動特性として、これまでも多くの人が、「日柄」に基づく変動パターンを挙げている。しかし残念ながらそれは極めて感覚的な捉え方であったと思う。そこで最初の例として、日柄に基づく変動パターンを、どのようにしてテクニカルに分析するかを紹介してみることにする。

 先物の場合の鞘の変動は、先限つなぎ足同士で比較してある。実際の売買では一代足を用いるか、バックアジャストされたつなぎ足同士で鞘を比較するべきだろう。しかしここではあくまでも考え方の紹介にウェイトを置きたいので、エッジトレーダーが持つデータで、長い期間の指標を適用できる先限つなぎ足を分析に用いている。

<灯油とガソリンの例>
灯油−ガソリン、先限つなぎサヤチャート



 上記チャートは、灯油の先限つなぎ日足から、ガソリンの先限つなぎ日足を引いた、鞘のチャートである。これを見て、私が何を言いたいのか判るだろうか?
 銘柄によっては、鞘にもはっきりとしたトレンドが現れるものがある。今回紹介した灯油とガソリン以に加え、日経平均とTOPIXが典型的に鞘がトレンドを描く銘柄である(もちろん他にも存在する)。こうした銘柄のトレンド分析にはスイングHL(注1)が適している。(カギ足は通常%を使用しているので、ゼロを挟んで行き来する鞘の 分析には不向きである。値幅のカギ足なら大丈夫だが、値幅の設定が普遍的でないので大変である)
上記に説明したように、鞘取りにおいて最も特徴ある分析法は、日柄の認識である。その鞘独自、あるいはその期間独自の、特徴ある鞘の振幅特性を、どのようにして見出すかが一番のポイントになる。ただ単に鞘のチャートを描いていたのでは気付かないことが、エッジトレーダーのようなテクニカルツールを鞘に適用することで、明らかになる場合がある。上記チャートで、皆さんなら何を基準に振幅の日柄を測定するだろう?
 理想としては、アップトレンドの時は、スイングL(青い点)の近辺でエントリーできていて、ダウントレンドのときには、スイングH(赤い点)の近辺でエントリーが可能になればよいわけだ。どうすればそうしたカウント方法を見出すことができるだろうか?
 ここでも大切なのは結果ではなくて、考え方のプロセスである。考え方のプロセスがマスターできれば、結果は自分次第でどうにでもなるからである。

 それでは参考までに私の考え方を紹介しておく。

<レイダーズ流日柄分析法>
 最初のエントリーはブレイクアウトで仕掛けても良いのだが、やはりそれだけではダマシが増える。ブレイクアウトでは、通常のトレンドフォロー売買の、半分のリスクサイズの感覚で仕掛けるようにする。
鞘取りの場合、メインの売買はトレンドの方向(ここではスイングHLによりトレンドを定義している)とは逆のカウンタートレンド(押し、戻し)が形成される局面を狙って仕込むようにする。感覚的には日柄に基づく逆張りとなる。例えばトレンドがアップトレンド(チャート下部のスイングHLトレンドIndexが+1)なら、仕込みは押し目になるので、スイングHからの経過日数をカウントする。つまり直近の高値から下落し始めて何日経過したかを数えていくのである。反対にダウントレンド(スイングHLトレンドIndexが−1)なら、直近の安値からカウントを始めて、戻しの日柄を計測する。
 エッジトレーダーの鞘取り版を持っている人は、実際にこの方法で日柄を計測してみて欲しい。面白いほど、日柄の振幅に特性が存在していることがわかるはずである。当然局面の推移によって、振幅日数が微妙に変化していくのだが、そこにある特徴が存在していることに気付くだろう。

 まず、ABまでの日柄は11日、BCが12日、CDが12日、DEが11日となっている。この期間の日柄の一致には驚くべきものがある。もちろんこうしたパターンは後からなら簡単に見出せるが、実際にそれが発生しているときにこうしたパターンが存在していることに気付く必要がある。そのためには、鞘の振幅を、ここで示したような見方で計測している必要があるだろう。
続いてEFは7日、FGは4日、GHは5日、HIは4日となっている。ここで注目してもらいたいのは、鞘の振幅幅は、トレンド転換が発生した直後は小さく、中盤では大きく拡大し、終盤では再び小さくなっていくという点である。E以降の鞘の振幅を見ていると、まるで呼吸をしているかのように、小さくなっていくのがわかるが、  ここにも日柄の一致を読み取ることができる。
その後、これまでのダウントレンドから、アップトレンドへと鞘が変化していった。は転換直後で動きがあやふやだが、では3日、では5日、では7日、では5日という振幅が読み取れる。ここで重要なのは、前に説明したように、スイングHとなっている高値からの日数である。押しで買いを仕込みたいわけだから、高値から何日後に仕掛ければ良いかを考えると、高値から5日後がベストな日柄であることがわかる。そして利食いの日柄は、徐々に伸びてきているので、これから益々、この鞘がアップトレンド方向に拡大してくことが読み取れる。(実際に、私は以降はほとんどピタリと仕掛けの日柄を当てている)

 ここで紹介した日柄の考え方が、全ての鞘に当てはまると言うつもりはない。それぞれの銘柄によって、鞘は特徴ある値動きを見せるからである。また同じ銘柄でも、ずっと同じパターンが存在し続けるわけではない。しかし、結果論で話をしているわけではなく、実際の相場の中で、これらの特徴あるパターンを見出すことは可能なのである。


<レイダーズ流振幅測定法>
 また、日柄の計測に加え、値幅による振幅の測定も可能である。移動平均を書き加えることで、押しや戻しのポイントをうまく捉えることができる。ここでは20日単純移動平均(ピンク)をボリンジャーバンドとの組み合わせで描いているが、TOPIXと日経225には、20日加重平均(グリーン)を、振幅測定ツールとして採用することを勧める。TOPIXと日経225の鞘取りでは、日柄の計測はかなり複雑で見出しにくいので、こうした値幅の振幅を計測する方が楽である。
 ちなみにTOPIXと日経225の鞘を描くには、TOPIXを10倍してやる必要がある。チャートでは日経225から10倍したTOPIXを引いている。また同じ20日期間の単純移動平均(ピンク)と比較すると、20日加重平均(グリーン)の方が押し戻しのピークをうまく捉えていることがわかると思う。(移動平均は1日スライドさせてあるので、前日の値を当日に切ったことがわるようになっている。こうしておかないと、実戦では使えないからである)
 実際の売買に利用するには、鞘がスイングHLで定義されるトレンドの方向とは反対の方向に動き始め、一旦加重平均を切った後に、再びトレンドと同じ方向に向けて加重平均を超えていくときにエントリーを行うのが良いだろう。(利食いのタイミングや詳細な売買手法については、次回以降のテーマとしたい)


日経平均−TOPIX×10、サヤチャート



 TOPIXと日経225の鞘取りには、以前なら先物を利用するしかなかったので、資金的にも大変だった。しかし今は上場投信(ETF)として信用取引が可能になったので、小額の資金で売り買いを組み合わせた鞘取りができるから非常に便利である。冗談抜きに「日経225という銘柄を買う」ことが可能になってきたのである。良い時代になってきたものだ。後は一般の投信も会社型にして上場し、その信用取引を開放してくれれば、ひたすら空売りが掛けられるのだが。TOPIX投信を買って、「XXXX日本株戦略ファンド」なんていう大型投信を空売りしておけば、株価の上下に関係なく、きっとすばらしい利回りの鞘取りができることだろう(笑)

 ここで紹介したのは、鞘の分析法の一例に過ぎないが、最初に言いったように、大切なのは考え方のプロセスを理解していくことである。相場は常に流動的であるから、固定的な手法を採用していたのでは、いつの間にか相場の変化についていけなくなってしまう。しかしプロセスを理解している人であれば、常に変化する相場の中でも、自分に適した正しい答えを見出すことができるのである。

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スイングHLの解説

・突出する高値と安値のポイントの認識を、日柄により行う分析手法である。
・日柄により計測される高値のポイントは「スイングハイ=SH」、安値のポイントは「スイングロー=SL」と呼ぶ。

 つまり上記左の図のように、ある日の高値が、その左右何本(nBar)かの全ての高値より高い時、そこがスイングHとなる。(上記例: 2BarSH
これに対し、上記右の図のように、ある日の安値が、その左右何本(nBar)かの全ての安値値より低い時、そこがスイングLとなる。(上記例: 2BarSL

 左右に数える本数を何本にするかによって、ピボットの認識の感応度が変わる。この本数を多くすればする程、より長期の波動を捉えることになる。

エッジトレーダーの案内

インベストメントテクノロジーズ株式会社サイト
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