===== RMG流エッジトレーダー活用法 =====

「鞘取りなんて難しくない」
誰でもできる、レイダーズ流「テクニカル鞘取り」入門

≪第4回≫

<美味し過ぎる隙間の運命>

 このシリーズで紹介している鞘取りという売買技法は、最近プロのトレーダー達の間でも非常に多く利用されるようになってきている。私が10年以上も昔、大豆市場を使った鞘取りをやっていた頃は、実需を背景とした商社以外では、こうした売買手法を商品市場に持ち込んでいたのは、数えられるほどの小数の人達であった。当時は板寄市場しか存在していなかったので、鞘取りと言っても今のザラバの鞘取りとはかなりテクニックが違っていた。板寄せの場合は必ずタイムラグがあるので、一方の値動きを推理しながら、今の限月や商品を売買していく必要があった(現在でもそうである)。
 ここ数年プロの間で主流となっているガソリンや灯油といったザラバ市場の鞘取りでは、対象となる2つの限月や商品が同時に売買できるので、できる限り早く板情報や値動きの変化を知ることができて、できる限り早く注文を執行できることができれば、1日に何度も売買して、非常に狭いレンジの鞘の変化を取りに行くことが可能である。どこかの限月が瞬間的に突出した高値をつければ、その限月を売り、そしてすぐに平均的な価格をつけていて流動性の高い限月(必然的に先限に近い限月になる)か、割安な価格を示した限月に買いを入れる。そしてその突出していた限月が通常の価格水準に戻ったところで、反対売買を行うのである。プロのトレーダー達の環境は、こうした超短期売買が可能な、恵まれた(優位性の存在する)環境なのであるから、短期鞘取りにより、これまで随分彼らは利益を上げてきた。
 しかし、そんなにいつまでも美味しい環境が存在し続けるはずもなく、ここ最近は狭いレンジの鞘を取りに行くディーラー達同士の食い合いとなってきており、なかなか簡単に利益をあげられなくなってきている。これが単なる一時的な停滞であれば良いのだが、過去の為替市場、株価指数先物やオプション、そして金市場の例を見ても、遅かれ早かれ、市場に存在する美味しすぎる大きな隙間は、あっという間に消えてなくなる運命にある。最も簡単でリスクの低い売買手法が、いつまでも通用するほど市場は甘くないのである。
 そうなると、その後はどうなっていくのだろうかと心配になってくるかもしれないが、これは過去に起こってきた為替や株価指数の例を見れば、すぐに推測がつくだろう。今現在も為替は金利市場と他通貨との間での鞘取りが機能するし、株価指数も現物株とオプションとの間での鞘取りは機能している。しかし過去にゴールドマンやソロモンが、株価指数先物を始めたばかりの日本の証券市場に参入して、数名のトレーダーで年間に数百億もの利益をかっさらっていった時代のような、そんな甘い世界ではなくなっている。今では確定で利益が取れるチャンスなど無いに等しく、それぞれサヤを組んだ段階では損失となるような、リスクポジションを取らざるを得なくなっている。資金も大量に必要で、本当に狭い幅を量でこなしているという状態である。つまり隙間は無いわけではないが、非常に狭い隙間しか存在しなくなっているので、完全なシステム化を進め、執行のスピードアップを図ったところしか、勝ち残れない状態になってきているのである。
 こうした歴史的事実を踏まえると、私には今のプロトレーダー達が行っている、商品先物のザラバにおける狭いレンジでの鞘取りは、ますます身を削る厳しい世界に突入していくとしか思えない。

<プロだから見えないもの>

 現在のザラバ商品における鞘取りの大半は、限月間の価格のブレを利用したものである。どの限月を組み合わせて鞘を仕掛けるかは、当人の売買スタイルによる。ブレの幅を短期的に大きく取りたいなら期近限月を組み合わせることになるが、この場合当然流動性が低いので、売買できる枚数も少なくなるし、間違った場合でも逃げるのは一苦労である。それが嫌な場合は、先限に近い限月で鞘を組むことになるのだが、この場合は流動性が高い代わりに、短期的な鞘の変動は非常に狭くなる。相場の世界はいつものことで、そうそう甘くはないのである。
2002年6月は、こうしたプロの鞘取りトレーダー達にとっては、なかなか厳しい月であったらしい。 各社で短期鞘取りを行っているプロのトレーダー達の話を聞くと、鞘の変動が少なく、うかつに手を出すと、自分で自分の首を絞めるようなことになり兼ねないような状態であったらしい。この時期に市場が沈滞したということもあるが、彼らが取れなくなった原因のひとつには、取引所端末のスピードが遅くなったことも上げられるだろう。取引所のサーバーが、増加する短期トレードの売買処理に対応しきれなくなってきており、仕方なく価格更新のスピードを落としてきたのである。こうなると、目の前のスクリーンについている価格ですぐに約定できていたこれまでの優位性が薄れてしまい、短期の鞘取りを得意としていたトレーダー達には、厳しい状態になってきたのである。この文章を書いている7月半ばになってもこうした状態はずっと続いている。
 それでは、鞘取りという売買手法は、ザラバの商品市場ではもう通用しないのかというと、実はそうでもないと考えている。その根拠は、これまでも紹介してきたEdgeTrader(Spread)という、当社開発の鞘取り用チャート分析ソフトで描いた、鞘の変動をご覧頂ければおわかりになるはずである。
(このソフトは当社のHPから試用版が無料ダウンロードできる:
 http://www.investechno.com/)

 図1は、ガソリンの8月限と10月限、9月限と11月限、10月限と12月限、11月限と1月限の鞘のチャートである。いわゆる1つまたぎの鞘チャートを描いてみた(2つまたぎにすると、傾向は同じだが更に振幅が大きくなる)。これをご覧になればおわかりのように、6月から7月にかけての鞘の変動は、決して小さくないことがわかる。しかも鞘の変化パターンは比較的単純でわかりやすいものである。もし私が6月から7月にかけてガソリンの限月間の鞘取りを行っていたとするなら、当然のことなら、期近に近い限月を買い、先に近い限月を売るというポジションを組んでいただろう。仕掛けのタイミングは、鞘の変動サイクルと変動幅から、ある程度推測が可能である。それを客観的に見るために、ボリンジャーバンドとスイングHLを描いてみた。これにより、鞘のトレンドの方向性がつかめるし、変動幅の限界点が推測できる。例えば、直近の値動きを見れば、再び新規に期近買いの期先売りの鞘取りを仕掛けるタイミングにきていることがわかるだろう。
 ところが、超短期の鞘取りを行っているプロのトレーダー達と話をしてみると、このような鞘の変動があったことは全くわかっていない。これは不思議に思うかもしれないが、彼らが売買しているサイクルがあまりにも短く、そして狙っている鞘の変動があまりにも小さいために、ここに示したような数日間にわたる鞘の推移には目が向かないのである。もし彼らが、今の売買サイクルに固執しなければ、実はすぐ目の前に、もうひとつの美味しい鞘が存在していることがわかるはずなのだが、一度身についた短期売買のクセはなかなか抜けないので、どうしてもこうした大きな変動には目が向かない。私にはそれが残念で仕方が無い。

<チーズを探せ>

 今後、今現在主流である超短期鞘取りで利益を上げられなくなってきたら、トレーダーは、更にすぐれた環境を造り出して生き残るか、新しい市場や売買手法を模索して自分が変わっていくか、あるいは黙って消え去っていくかしかない。今回私が示している、こうしたサイクルの鞘取りにも、そのうちプロのトレーダーが大量に参入してくる日が遅かれ早かれやってくる。そうすると、またそこに存在している「美味しい」鞘は消滅していくのである。しかしそれでも私はなんとも思わない。なぜなら、こんなことは今に始まったことではなく、遠い昔からずっと繰り返されてきたことだからである。そしてそのことに気付いている人間にとっては、目の前の鞘が消えて無くなったとしても、どこかに存在していて、そしてまだまだ多くの人には見えていない美味しい隙間を、また探しだせば良いだけの話である。チーズは必ずどこかに存在していて、誰かに発見されるのを待っているのである。

 「市場には2種類の人間しか存在しない。それは勝者か敗者かである」

ガソリン 10月―8月




ガソリン 11月―9月




ガソリン 12月―10月




ガソリン 1月―11月



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