===== RMG流エッジトレーダー活用法 =====

「鞘取りなんて難しくない」
誰でもできる、レイダーズ流「テクニカル鞘取り」入門

≪第5回≫

 これまでRMG流テクニカル鞘取りということで、テクニカル分析を用いて、どのように鞘の変動を分析し、売買の意思決定に用いるかという技術を紹介してきた。今回からは、鞘の変動が起こる背景に視点を当て、鞘取りの戦略をどのように組み立てていくべきかについて紹介してみようと思う。

<季節的要因に基づく鞘取り>

 鞘取りというと、最も一般的なのが、この季節的要因に基づく鞘取りである。限月間の価格変動の違いを利用して利益を上げていこうという戦略で、いわゆるカレンダースプレッドと呼ばれているものである。
 我々が売買する商品は、需要と供給により価格が決まるのが原則である。需要や供給は、毎月同じように変化するわけではないので、その月ごとに価格が違ってくる。先物取引では、将来の価格を売買するために限月という制度があるので、こうした月ごとによる価格差を利用した鞘取りが可能になるのでる。
 こうした限月間の季節的な価格差を利用した売買としては、これまでは穀物の鞘取りが有名であった。たとえば新穀が不作となり、旧穀と新穀で需給格差が生じている場合、旧穀限月を売り新穀限月を買うという鞘取りが可能である。あるいは、新穀が収穫されハーベストプレッシャーが掛かってくる時期には、売り圧力が掛かる限月を売り、需要が進み売り圧力が減少してくる可能性の高い時期の限月を買うという鞘取りも可能である。
 ただ、穀物の季節的要因を利用した鞘取りは、思っているほど簡単なものではないのが実情である。頭の中でイメージしているほど簡単ではっきりとした値動きを見せてくれないことが大半だからである。
 ところが、エネルギー銘柄の季節的な変動は、穀物よりもずっと顕著な変動パターンが見られることがわかっている。たとえば灯油の場合、当然のことながら最需要期は冬であり、夏場にはあまり需要は伸びない。このことから、秋から冬に掛けては価格が高くなり、春先には安くなるという季節的な変動が予想される。こうした季節的変動は、毎年同じような変動パターンを繰り返すことが多いので、それを利用して鞘取りを行っていくわけである。

<灯油の限月間鞘取りの考え方>

 灯油の限月は連続した6ヶ月制であるので、灯油の2002年12月限が新甫発会するのは、その6ヶ月前の5月末である。つまり12月限は5月末に最初の取引が始まり、12月末に納会を迎えるまでの6ヶ月間、ずっと売買し続けられるわけである。そしてその次の2003年1月限は同じく6ヶ月前の2002年6月末に新甫発会し、2003年1月末に納会を迎える。その後の限月である2003年2月限や3月限も、同様に6ヶ月前に新甫発会し、6ヵ月後に納会を迎える。これでわかるように、実際にはまだ夏の段階ですでに冬の価格を売買しているのである。こうした先物取引の仕組みを利用して、季節的要因による将来の価格変動シナリオを予測し、鞘取りを仕掛けていくのである。
 今回狙っている鞘変化のシナリオは、最需要期にある限月が高値を維持している一方で、それより後の限月は、時間の経過とともに荷余りによる売り圧力が掛かっていくというものである。毎年のことであるが、12月には確実にある一定量の需要があるのに対し、1月以降はその年の天候次第で、どうなっていくかわからない。しかしよほど特別な事情がない限りは、通常は12月限に対し、それ以降の限月は割安に売られていくのが常である。なぜなら、先物市場というのは、現物業者にとって余剰商品の最後の売り先であり、納会で余った現物を売り渡すことが可能だからである。だから時間の経過とともに、12月限に対し、それ以降の限月は売られる可能性が高いのである(ただし、需給逼迫を起こした場合は、このシナリオは逆になる)。
 また、最需要期である12月限以前の限月は、どうしても12月限に対しては割安に位置しやすい。特に12月限がまだ中物である時期には、当限である8月限は真夏に納会を迎えるわけだから、その年の天候次第では荷余り感から極端に売られることもある。今年(2002年)はそうした年になっている。いずれにせよ、需要のピークである12月限が一番高値をつけていて、それ以外の限月は12月限よりも下に位置しているという構図になる。こうした鞘の特徴を踏まえて鞘取りを仕掛けていくのである。

<基準限月を決める>

 限月間の鞘取りを行う際には、どれかひとつ基準となる限月を決めて、その基準限月に対してその他の限月を売買していくというのが一般的である。こうしないと、対象として考えられる鞘の組合せは膨大なものとなり、変動を捉えていくのが難しくなる。今回のケースであれば、最需要期である12月限を基準限月として考え、売買を行っていく。
 まず最初に、12月限を買い、それより期近にある限月を売る場合を考えてみよう。この場合、通常は納会が近づくにつれて期近限月が売られるというパターンになることが多いので、こうした値動きが出てきたら、期近限月を売り、12月限を買うという鞘取りを行う。しかしここで問題なのは、期近限月を売買するという点である。日本の商品先物市場は世界的に見ても特殊な市場で、期先に売買が集中し、期近になると極端に売買高が細ってくる(通常は期近に売買が集中し、期先は売買が成立しないことが大半)。だから、期近を売買するという戦略は、数字の上では成り立つが、流動性から考えるとリスクが大きいことになる。またこうした理由から、相場が一方通行になりやすく、ボラティリティーが高くなる。実際問題、過去の値動きを見ればわかるように、納会間近に大きく変動することが多い。そこで期近限月との鞘取りの場合、おのずと売買高を小さくする必要が出てくる。それが嫌な人は、流動性の高い先限を中心とした鞘取りがメインになってくるのである。
 次に先限を中心とした売買のケースとして、12月限を買い、それ以降の限月を売る場合を考えると、最初に鞘取りポジションを組むことができるのは、1月限の発会以降である。そこで、1月限の新甫発会で、12月限を買い、1月限を売るという戦略を組む。このとき、12月限よりも1月限の方が順鞘で高い値位置にあれば、それは非常に高い確率で利益を上げられるチャンスである。その後はこれまでに紹介してきたテクニカル鞘取りの技術を使って、鞘取り売買を行っていく。
次に2月限が発会したら、2月限の値位置があまり売られていないのであれば、新たに12月限買い、2月限売りのポジションを組む。次の3月限発会も、値位置次第で、同様に12月限を買い、3月限売りのポジションを組んでいく。12月限との組み合わせで売買していくのは、このあたりまでにしておいた方が無難である。それから先の限月は全て不需要期に入ってくるので、最初から期待感が無いために、鞘の変動が少ない上に、変化もわかり辛い。

<鞘型チャート>

 鞘の時間的変化を見るには、大きく分けて3通りの方法がある。ひとつはこれまで紹介したように、対象限月の鞘の変化を値動きとして捉え、「鞘チャート」を描く方法である。もうひとつは「鞘型」と呼ばれるもので、これは各限月の価格をそのまま横並びに同じ価格軸で描いたものである。こうすることで各限月の値位置が一目でわかるようになる。最後のひとつは「限月固定足」と呼ぶものだが、これはかなり特殊なチャートなので、次回説明する。
 鞘型を描く際には、ただ単にそれぞれの価格をそのまま横並びに描画したのでは、基準となる限月に対して、その他の限月がどのように変化したかがわかり辛い。そこで、ある特定の限月(今回の例であれば12月限)を固定して、その限月に対して他の限月がいくら上か下かを表示する相対的な表示方法を行う必要がある。今回ここで鞘を描くために用いているEdgeTraderでは、こうした特殊な鞘の表現が可能なので、鞘取りを行うトレーダーにとっては非常に便利である。(EdgeTraderはwww.investechno.com から申し込まれると1ヶ月無料試用できます)

 それでは12月限買いを中心に鞘取りを行うというシナリオに基づき、実際に鞘型チャートがどのように変化したかを、時間を追って見てみることにしよう。

A図 <2002年1月限発会> <1ヵ月後>



B図 <2002年2月限発会> <1ヵ月後>

C図 <2002年3月限発会> <半月後>

D図 <2003年1月限発会> <3週後>

E図 <2003年2月限発会> <1ヵ月後>

F図 <2003年3月限発会>

 A図は2001年6月21日に2002年1月限が発会したときの鞘型と、それから1ヵ月後の鞘型を示したものである。この段階では、2001年12月限と2002年1月限の鞘は順鞘化が進んでおり、想定したシナリオのように12月限が一番高いという値動きとはなっていない。

 B図は2002年2月限が発会したときと、それから1ヵ月後の鞘の様子である(月が変わると、鞘型の目盛りが変化しているので注意)。この段階になると、12月限に対し2月限が大きく売り込まれている状態がわかるはずである。その影響で1月限も売られている。また同時に、期近10月限も12月限に対し売られている状態が読み取れると思う。つまり2月限が発会して以降は、明らかに12月限を最高値とし、その周辺が売られるという鞘の変化を示したのである。これでわかるように、この時期の鞘型で12月限が最高値となっていなければ、そこには12月限買い、10月限あるいは1月限2月限売りの鞘取りチャンスが生まれる。

 C図は2002年3月限が発会したときと、それから半月後に、3月限が大きく売られている状態を示したものである。この年は3月限の売られ方は非常に極端で、発会後からわずかな日数の間に大幅に売り込まれた。このように短期的に売り込まれた場合は、それでエネルギーを出し尽くすことが多く、通常はそこから逆方向の急反発が始まるので、撤退は早めに行わなければならない。

 D図はこの翌年の2002年6月21日に、2003年1月限が発会したときと、それから約3週間後の鞘型を示したものである。これを見れば、今年は1月限が12月限に対して順鞘で発会したものの、その後すぐに逆鞘化したことがわかる。この例でも、この時期に12月限が鞘型の最高値に位置していないときには、鞘取りのチャンスが存在していることがわかるだろう。

 E図は2003年2月限が発会したときと、それから1ヵ月後の鞘型を示したものである。注目してもらいたいのは、この1ヶ月間における期近9月限10月限と期先2月限の値位置の変化である。今年の場合、2月限は発会から大きく売られたためか、その後は逆鞘を縮小する傾向の値動きが続いている。しかし期近の10月限を見ると、12月限に対し大きく売られている様子が見て取れる。鞘型からは、今年もやはり12月限が一番高値を維持していることがわかるが、昨年はどちらかと言うと先限の方が大きく崩れて右肩下がりの鞘型になったのに対し、今年は期近から値を崩して、左肩下がりの鞘型になっている。今年は昨年とは異なり、期近9月限が納会に向けて大幅に下落したのであるが、現実的な売買を考えるなら、9月限を売るのではなく、出来高がある程度確保されている10月限を売る方が安全である。
 
 F図は、この原稿を書いている2002年8月21日に、2003年3月限が発会したときの鞘型である。今後昨年同様に3月限がここから更に売り込まれていくのか、それとも今年の値動きのパターンを踏襲して、時間の経過とともに左肩下がりに期近限月が崩れていくのか、状況を見極めながら鞘のポジションを組んでいく必要があるだろう。いずれにせよ、12月限が一番高値に位置するという構成には変化はなさそうである。だから基本的には12月限を買い、11月限売りと2月限3月限売りで対処することになるだろう。このときも、3月限が発会後急激に売られたなら、あまり深追いをしないことが大切である。可能性としては、今年の場合は左肩下がりとなっているので、10月限の納会までの間に、11月限と2月限の位置関係は逆転して、11月限の方が下になる可能性が高い。

 このように鞘型を見ることで、個別の限月の組合せだけで描いた鞘チャートだけを見ていたときには気付かなかった、各限月間のうねりのような変化を見ることができるようになる。鞘取りを専門とするトレーダーは、こうした鞘型の変化を巧みに利用して、より有利な鞘を仕掛けていくのである。

<優位性の存在がポイント>

 今回説明したように、季節的要因に基づく鞘の変化には、毎年ある一定の特徴あるパターンが見られることが多い。こうした鞘の変動パターンは、毎年全く同じものであるとは言わないが、少なくとも似通った変化をする可能性が高い。だからこうしたシナリオに基づいて鞘取り戦略を組み、実際の売買では、これまで紹介してきたように、鞘そのものの値動きをテクニカルに分析して、リスク管理を行いながら売買を行っていくことをお勧めする。鞘取りも通常の売買も基本的には同じで、値動きがあるからと言って闇雲に売買していてはなかなか利益を上げることはできない。そこに優位性が存在しているときにのみ、その優位性を見方につけて売買することで、継続的な利益を得ることができるのである。


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