===== RMG流エッジトレーダー活用法 =====

「鞘取りなんて難しくない」
誰でもできる、レイダーズ流「テクニカル鞘取り」入門

≪第7回≫

  この数ヶ月間は、過去に紹介した売買手法の検証を行っている。今月は、2002年7月号で紹介した中部と東京のガソリンの鞘取りをフォローしてみたい。前回この鞘取りを紹介してから後、2つのご批判を頂いた。1つは「中部は板寄売買なので、決まるまでいくらになるかわからない。だから実際にはこの鞘取りは出来ない」というもの。もうひとつは「最近は鞘にトレンドが出てきているので、単純なボリンジャーバンドの逆張りでは通用しない」というものである。
 最初のご批判に対しては、言われるまで気付かなかったというのが本当のところである。我々は板寄席であっても、常にセリの音声を聞いたり、板画面を見たりすることのできる環境でずっと売買を行ってきたので、一般投資家の方がそうではない環境におられるということに気付かなかった。ネットトレードの場合、立会い10分前に注文受付を終了するのが大半というのだからなお更である。電話で売買すれば良いのだろうが、そうするとまだ現時点では対面営業の手数料は固定制なので、売買コストが高くなり過ぎて鞘取りができない。これに関しては残念ながら、ネット注文のリアルタイム化および手数料自由化といった環境の改善を待つしかないと思う。
 もうひとつのご批判である、鞘がトレンドを描き始めているので、逆張り手法が通用しなくなっているという件は、かなり重大な問題である。前回この鞘取りを紹介した時点では、中部と東京のエネルギー銘柄の鞘は、トレンドを描くことがほとんどなかった。チャートをご覧になればおわかりのように、ガソリンは依然として鞘にトレンドがあまり見られないので、逆張り的な売買手法が有効であるが、灯油は8月半ば以降は明らかにトレンドが発生しており、当初想定していた逆張りの売買手法では明らかにマッチしなくなっている。そこで、どうすればこうした市場変化に対応していけるのかについて、今月および来月の2回にわたり考察してみたい。

<東京VS中部のガソリン、灯油>

 まずは2002年7月号の復習から始めることにする。図1は東京工業品取引所のガソリンと中部取引所のガソリンの、先限同士の終値に基づく鞘を描いたものであり、図2は同様にして灯油の鞘を描いたチャートである。前回の分析に用いたのと全く同じボリンジャーバンドを、今回も鞘チャートに適用してある。チャートに示したのは、20日移動平均線(ピンク太線)の上下に、同期間の1標準偏差(緑)、2標準偏差(オレンジ)、3標準偏差(水色)、そして5標準偏差(黄色)のバンドを描いたものである。
 以下は前回採用した売買手法である。

 仕掛け=3分割仕掛。1標準偏差を越えたら1/3、2標準偏差で更に1/3、そして3標準偏差を越えたところで、最後の1/3を仕掛ける。もし寄付きでいきなり3標準偏差を越えてきた場合は、一度に全部のポジションを仕掛ける。(標準偏差も移動平均線も、全て前日の値を用いる)
利食い=20日移動平均線を越えてきたところで、全部一度に行う。
損切り=最初に仕掛けたときの逆方向の5標準偏差を、終値ベースで越えたら損切る。

 この売買ルールは、あくまでも鞘の変動がトレンド描かずに一定範囲を往復することを想定して作成されている。だからガソリンのような値動きを続けている限りにおいては、ときどき5標準偏差を反対に切ったために損切りにはなることもあるが、大半の期間においては利食いの連続となる。損切りの場合のリスクも、仕掛けたときの反対方向の5標準偏差と決まっているので、損切りまでの距離は仕掛けた段階で確定している。損失が限定されている中でこれだけ勝率が高ければ、なかなか負けることは難しい。
 ところが、灯油のチャートをご覧になればおわかりのように、8月半ば以降は明確にトレンドが発生している。こうした環境下では、前回紹介した逆張り手法ではうまく機能しないのは当たり前の話である。それではどうすれば良いのだろうか?

<技術の背景にある考え方>

 これから先は、私がたどった思考の道筋を、読者の皆様にも一緒に辿って頂きたいと思う。そうすることで、最も大切な「考え方」を習得することが出来るからである。
 私がまず最初に考えたのは、環境認識の手法である。ここで最も大切な環境の定義は、「鞘の値動きにトレンドがあるのか、それとも無いのか」ということである。トレンドが無い環境であれば、これまで通り逆張りの売買手法を継続していけば良いが、トレンドが発生している環境では、以前にも紹介したような、トレンドフォロータイプの売買を行う必要がある。ではトレンドがあるか無いかを、皆さんならどのように区別されるだろう?
 私が最初に思いついたのは、最も得意なトレンド認識法であるスイングHLを使用して、トレンドの方向を認識させるというものであった。今回のチャートには、スイングHLのポイントが赤点と青点で描かれており、それに基づくトレンドの方向性の認識が、チャートの下部に「スイングHLトレンドIndex」という名称で描かれている。この指標は、プラス1がアップトレンド、マイナス1がダウントレンド、そしてゼロが保合いを示している。
 これでトレンドの方向性は認識できるようになった。灯油のチャートを見ればわかるように、8月頭からずっとアップトレンドが続いていることは確かに見て取れるが、私が本当に求めたかったものとは何かが違っている。これによってトレンドの方向はよくわかるようにはなったが、7月以前の値動きの中に置いては、このトレンドの方向認識はほとんど意味がない。通常の銘柄を売買する場合であれば、価格がトレンドを描くことを前提としているので、トレンドがあるかないかという判断より、トレンドの方向性を的確に捉えることの方が優先される。しかし中部と東京の鞘は、本来はトレンドを描かないのが普通である。だから明確なトレンドが存在しないときに鞘の方向性を示されても、売買にはあまり参考にはならない。そこで鞘の方向性の前に、ここではもっと大切な環境認識が必要であることがわかる。それは鞘の値動きに「強いトレンド」が存在しているかどうかである。強いトレンドが存在しているのであれば、逆張り的な鞘取りでは全く通用しないので、トレンドフォローを前提とした鞘取りを行う必要がある。ではどうすれば、明確で強いトレンドの存在、すなわちトレンドの強さを客観的に認識することができるのだろうか?(次号へ続く)

図1:東京ガソリン−中部ガソリン(先限つなぎ鞘)


図2:東京灯油−中部灯油(先限つなぎ鞘)



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